
この記事でわかること
- 現行6機種の価格・重量・対応OS
- 画面・ノブ・専用ボタンの違いと、それぞれの長所
- 何ができて何ができないかの一覧
- MPC Sample だけは中身が別物という注意点
現行は6機種。価格と重量で並べる
Akai の MPC は、スタンドアロン(パソコン不要)で動く機種だけで6つあります。価格は7倍、重量は約3.4倍の開きがあります。
| 機種 | 発売 | 新品価格 | 重量 | ひとことで言うと |
|---|---|---|---|---|
| MPC Sample | 2026年3月 | 62,800円 | (未確認) | 最小・最安。ただし中身は別系統 |
| MPC One | 2020年2月 | 129,800〜139,800円 | 2.1kg | 定番。中古が多い |
| MPC One G2 | 2026年6月 | 139,800円 | 2.1kg | One の新世代。処理能力4倍 |
| MPC Key 37 G2 | 2026年6月 | 159,800〜174,800円 | (未確認) | 37鍵つき |
| MPC Live III | 2025年10月 | 259,800〜268,000円 | 3.9kg | 電池内蔵の上位機 |
| MPC XL | 2026年1月 | 418,000〜449,800円 | 7.2kg | 据え置きの旗艦 |
重量は「電池が入っているか」とは別の判断軸です。Live III は電池を内蔵していますが3.9kgあります。参考までに Roland SP-404MKII が1.1kg、MPC One G2 が2.1kgです。外に持ち出す前提なら、この差は毎回効いてきます。
Akai公式による MPC One の入門動画です(日本語の字幕つき)。画面とパッドを行き来するこの操作感は、本文で比べている6機種に共通しています。値段と重さを見る前に、まず「MPCとはこういう道具」を確かめてください。
対応OS ― ここがいちばんの落とし穴
MPC3 OS は旧機種にも無償で入る
MPC3 は2025年初頭に出た新しいOSです。リニアアレンジャーが加わり、トラックと音源が「1トラック=1プログラム」に統合されました。Akai 公式によれば、以下の8機種に無償アップデートで提供されます。
- MPC X / MPC X SE
- MPC Live / MPC Live MKII
- MPC One / MPC One+
- MPC Key 37 / MPC Key 61
これに新型4機種(One G2・Key 37 G2・Live III・XL)が加わります。つまり2020年発売の MPC One でも MPC3 OS は動きます。新型で変わるのはプロセッサであって、OSではありません。
MPC Sample だけは、MPC OS 系ではない
ここが分かりにくいところです。名前に MPC が付き、MPCパッドを積み、MPC60/3000にインスパイアされた外観をしていますが、MPC Sample は MPC OS とは別のシステムで動いています。
島村楽器の実機レビューは、はっきりこう書いています。
「近年のMPC ONEやMPC Liveシリーズは『MPC OS』独自のオペレーティングシステムを採用していますが、どうやらこちらのMPC Sampleはそちらとは別物となるようです」
同レビューは「従来のMPC OSと異なり、コンパクトさゆえに色々な制限はもちろんあります」とも述べています。実際、搭載メモリは2GB、ストレージは8GB、画面は2.4インチで、7インチ画面・64GB以上を積む他機種とは設計思想が違います。
「安いMPCを買って、あとで上位機と同じことをする」という買い方はできません。MPC Sample は独立したサンプラーとして評価すべき機種です。
何ができて、何ができないか
横にスクロールできます。「未確認」は公開資料で裏が取れなかった項目です。
| Sample | One | One G2 | Key 37 G2 | Live III | XL | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| MPC3 OS | × 別OS | ○ 無償更新 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| G2プロセッサ | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ 16GB |
| 電池内蔵 | ○ 約5h | × | × | × | ○ 約5h | × |
| 内蔵スピーカー | ○ | × | × | × | ○ | × |
| 内蔵マイク | ○ | × | × | × | ○ | × |
| 鍵盤 | × | × | × | ○ 37鍵 | × | × |
| 3D MPCeパッド | × | × | × | × | ○ | ○ |
| XLR入力 | × | × | × | × | ○ 2系統 | ○ ファンタム |
| CV/Gate出力 | △ SYNCのみ | ○ | ○ | 未確認 | 未確認 | ○ 16ch |
| 自動サンプリング | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| AI音源分離 | × | △ 追加購入 | △ 追加購入 | △ 追加購入 | ○ 標準 | 未確認 |
| 画面サイズ | 2.4型 | 7型 | 7型 | 7型 | 6.9型 | 未確認 |
| 重量 | 未確認 | 2.1kg | 2.1kg | 未確認 | 3.9kg | 7.2kg |
3D MPCeパッド(押し込みの深さを検知するパッド)は、Live III と XL の2機種だけの機能です。One G2 と Key 37 G2 のパッドはポリフォニック・アフタータッチ対応で、これも十分に表現力はありますが、別物です。
操作子の違い ― ここが使い勝手を決める
画面の大きさ、ノブの数、専用ボタンの有無。カタログでは目立ちませんが、1曲作るあいだに何回メニューを潜るかがここで決まります。
| Sample | One G2 | Key 37 G2 | Live III | XL | |
|---|---|---|---|---|---|
| 画面 | 2.4型 | 7型 | 7型 | 6.9型 | 10.1型 傾斜可 |
| Q-Linkノブ | — | 4 | 4 | 4 | 16(各OLED付き) |
| ステップ専用ボタン | × | × | × | ○ 16個 | ○ 16個 |
| タッチストリップ | × | × | × | ○ 11モード | ○ |
| パッド | 16 ポリAT | 16 ポリAT | 16 ポリAT | 16 MPCe 3D | 16 MPCe 3D |
| ホイール | × | × | ○ ピッチ/モジュ | × | × |
XL ― ノブ16個とOLEDが効く
16個のQ-Linkノブに、それぞれ専用のOLED画面が付いています。他機種は4ノブで、バンクを切り替えながら16パラメータに割り当てます。XLは16個が同時に見えて、同時に触れる。ミックスや音作りで手が止まりません。
さらに「XL Channel Command」という専用のOLEDとエンコーダーがあり、レベル・センド・出力・録音設定にボタン1つで飛べます。10.1インチの傾斜できる画面と合わせて、据え置きで長時間さわる前提の設計です。
Live III ― ステップ専用ボタンが付いた
Live II まではパッドをステップシーケンサーモードに切り替えて使っていました。Live III は16個の物理ボタンが独立したので、打ち込みながらパッドで演奏できます。モードの行き来が消えるのは大きな違いです。
しかもこのボタンは単なるステップ入力ではありません。確率、ラチェット、ピッチ、エンベロープの編集まで持ち、各ステップにエフェクトやパラメータのオートメーションを書けます。Elektronのパラメータロックに近い操作感だと評されています。
タッチストリップは11モードを切り替えられ、ピッチベンド、モジュレーション、ステップのベロシティ調整、クロスフェード、Touch FX などに使えます。「Q-Linkモード」では最後に触ったパラメータが即座に割り当たるので、オートメーションが速くなります。
MPCe 3Dパッド ― Live III と XL だけ
押し込みの深さを検知するパッドで、1枚のパッドが4象限に分かれています。象限ごとに違うサンプルを置けるため、16パッドで最大64音を扱える計算になります。
ドラムなら、1つのパッドにゴーストノートやロール、ルーディメントを仕込んでおく、といった使い方ができます。One G2 と Key 37 G2 のパッドもポリフォニック・アフタータッチ対応で表現力はありますが、象限分割はできません。
One G2 ― 4ノブ・7インチで足りるか
操作子は MPC One+ とほぼ同じです。7インチのマルチタッチ、4つのQ-Link、16パッド。ステップ専用ボタンもタッチストリップも3Dパッドもありません。
ただし画面が7インチあるので、波形編集もチョップも指で完結します。「足りない」のではなく「Live III と XL が増やした」と捉えるほうが実態に近いです。2.1kgという軽さは、この構成だから成立しています。
Sample ― 2.4インチをどう見るか
画面は2.4インチで、Q-Linkノブもありません。他機種の7インチと比べると、できることの幅は明確に狭まります。
ただしこれは欠点というより設計の選択です。小さな画面で完結する操作だけを載せた結果が、あの価格と携帯性になっています。前述のとおりOSも別系統です。
選び分けの軸は4つ
1. 鍵盤が要るか
Key 37 G2 だけが37鍵のセミウェイテッド鍵盤を持ちます。アフタータッチ、ピッチベンドとモジュレーションホイールも付きます。ただし入力端子は One G2 のバランスTRSより簡素なステレオライン入出力になります。払っているのは演奏性であって、音の入り口ではありません。
2. 外に持ち出すか
電池・スピーカー・マイクを内蔵しているのは MPC Sample と MPC Live III の2機種で、どちらも連続稼働は約5時間です。
ただし重量差が約2倍あります。Live III の3.9kgは、鞄に入れて毎日持ち歩く重さではありません。One G2(2.1kg)に市販のノートPC用モバイルバッテリーを足す構成なら約2.7kgで、スピーカーと内蔵マイクは失いますが軽くなります。
3. 入出力をどれだけ使うか
ここが XL と他機種の最大の差です。ファンタム電源つきXLR/TRSコンボ入力を2系統、専用インストゥルメント入力、個別ライン出力を8系統、8基のステレオCV/Gate出力(合計16チャンネル)を持ちます。USB-Cは24chオーディオ/32ch MIDIとして働きます。
45万円の内訳の多くは、この入出力です。音源やシーケンサーの差ではありません。CVもXLRも使わないなら、確実に過剰です。
4. 自動化とAIを使うか
自動サンプリング(Auto Sampler)は MPC3 OS の機能なので、対応機種すべてで使えます。MIDIでつないだ音源を音域・ベロシティ別に自動で録り、キーグループとして並べます。この機能のために上位機を買う必要はありません。ただし MPC Sample では使えません。
AI音源分離(Stems Separation)は Live III のみ標準搭載です。他の MPC OS 機は追加購入(9.99ドル、ファームウェア2.15以降)で使えます。1曲をボーカル・ドラム・ベース・その他の4パートに分離する機能で、分離エンジンには zplane の技術が使われています。
では、どれを買うか
| こういう人 | 向いている機種 | 理由 |
|---|---|---|
| とにかく軽く、外で作りたい | MPC Sample | 6万円台で電池・スピーカー・マイク内蔵。ただし別OSで拡張性は低い |
| パッドで刻んで曲まで作りたい | MPC One G2 | 2.1kgで処理能力4倍。価格対性能が最も良い |
| コードやメロディを弾いて入れたい | MPC Key 37 G2 | 37鍵とホイール。差額は2〜3.5万円 |
| 外で使い、音源分離も使いたい | MPC Live III | 電池内蔵でステム分離が標準。ただし3.9kg |
| セットの中心に据えたい | MPC XL | XLR2系統・8個別出力・16chのCV |
| 予算を抑えたい | MPC One(中古) | 2020年発売で流通量が多い。MPC3 OSは無償更新で入る |
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安い順に並べています。枠内の価格は当サイトが調査した相場で、販売価格ではありません。実際の価格と在庫は各店舗の表示をご確認ください。
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Akai MPC One+
- 新品相場
- ¥129,800〜¥139,800
- 中古相場
- 店頭 ¥74,800 / オークション ¥59,800〜¥83,400
2026-08-17 時点の調査(デジマート等の新品出品・楽器店の中古出品・ヤフオク落札実績)。相場は変動します。販売価格は各店舗の表示をご確認ください。
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Akai MPC One G2
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- 相場データなし
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Akai MPC Live III
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Akai MPC XL
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MPC One は現行品としては One G2 に置き換わったため、新品より中古の出物のほうが見つけやすい機種です。上の枠は現行の MPC One+ のリンクで、中古相場は店頭とオークションの調査値です。
買う前に確認したいこと
- MPC3 OS は旧8機種に無償で入る。OSだけが目的なら買い替え不要
- MPC Sample は MPC OS 系ではない。自動サンプリングもステム分離も使えない
- 自動サンプリングは MPC3 対応機すべてで使える。ここに価格差はない
- ステム分離が標準なのは Live III のみ。他は追加購入
- 電池内蔵と持ち運びやすさは別。Live III は3.9kg、One G2 は2.1kg
- XL の価格差は音源ではなく入出力。CVもXLRも使わないなら過剰
この記事は公開されているメーカー資料と国内代理店・販売店の情報をもとに書いています。実機での検証は行っていません。操作感やパッドの反応、実際の駆動時間など、触らないと分からない部分については書いていません。重量と一部の端子構成は、公開資料で確認できなかったものを「未確認」としています。
画像について: アイキャッチは各メーカーの製品写真を参考に、形状・配色・ボタンの配置をなぞって描いたAIイラストです(ロゴや文字は省略。写真ではありません)。本文の4コマ漫画もAIで作成したイメージです。
次に読む
- グルーヴボックス選びの物差し → グルーヴボックスの7項目
- 同じAkaiのもう1つの系統 → Akai Forceとは|クリップを並べて鳴らす単体機
- 買う前に日本の事情を → 日本で機材を買う前に。技適・PSE・保証・並行輸入
- Elektronの比較も → Elektronの違い|現行10機種を録音・音源・価格で選び分ける
出典
- Akai Professional サポート「MPC3 – よくあるご質問」(対応機種一覧)
- 島村楽器 Digiland「AKAI MPC Sample 実機レビュー」(OSが別系統である旨・仕様)
- Akai Professional 日本語製品ページ(MPC Sample)
- Akai Professional 日本語製品ページ(MPC LIVE III)
- inMusic Japan プレスリリース(MPC XL)
- inMusic Japan プレスリリース(MPC Live III)
- Akai Professional サポート(MPC Stems Separation FAQ)
- Akai Professional サポート(Auto Sampler でキーグループを作る)
- Sound on Sound「Akai MPC Live III」レビュー
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