この記事でわかること
- 10月1日〜8日に出た有志ファームウェアの一覧。対象機・何が増えるか・無料か・戻せるか
- なぜ今まとめて出たのか。海外メディアは「AIとvibe coding」が原因と書いている
- Elektronが9月16日に禁じたのは何か。「改造の禁止」ではない
- 持ち主が入れる前に確かめる6点。保証・バックアップ・純正ファイル・戻し方
- 当サイトの立場。所有機のSP-404MKIIには入れていない。手順と配布先は載せない
先に結論: 流れは本物で、しばらく続きます。ただし全部が「個人の試作」で、メーカーの保証も検証も付いていません。いま入れるべきなのは、壊れても困らない機材を持っていて、純正に戻す手順を先に試せる人だけです。
この1週間に出たもの
Synth Anatomy と Gearnews の報道と、各プロジェクトの公開ページを2026年10月8日に確認した範囲です。「無料」はコードの公開の形で、純正ファームウェアそのものを配っているプロジェクトは1つもありません。どれも持ち主が自分の機材から取り出した純正ファイルを土台に使います。
| 対象機 | 名前と中身 |
|---|---|
| Roland SP-404MKII | DOOM OS(0.6.2 alpha・10月6日)。グリッド型のパターンシーケンサー、ピアノロール、各トラックのレベルメーター付きミキサー、エフェクトつまみの自動化、取り消し12段。純正5.52が土台で、純正の機能はそのまま残る。無料 |
| Elektron Model:Cycles | Model-TG(OS 1.13・MIT)。7つ目のマシンとしてサンプラーを追加。ワンショット・ループ・スライス・グラニュラー・伸縮・撥弦・ウェーブテーブルの7モード、リサンプリング、マスターFX 12種。 Modded Cycles。Model:SamplesのOSを同居させて起動時に選ぶ、Syntaktの音源2種、6トラック別々のUSBオーディオ |
| Elektron Digitakt(初代) | Digisophie(OS 1.53)。打楽器シンセを4モデル追加。純正のアンプ・フィルター・エフェクトを通る |
| Elektron Octatrack MKI / MKII | octabam。OS 1.40Cから自分で組む「リミキサー」。独自のDSPエフェクト、8トラック共通の送りバス。Modwerk.appはブラウザで改造の組み合わせを選ぶ場所。Digitakt II と Digitone II は調査中と報じられている |
| M-VAVE FM-1(約60〜70ドルのFMシンセ) | Felucca 1.0(音源13種・4トラック)、SLOOP(4トラックのグルーヴボックス)、X0X(909・808・303×2・ブレイクビーツ)、sloopDX(6オペレーターのDX7型)、Omnichord型。ここまでGPL-3.0で無料。Groove OS(8トラック)だけ29ドルの有料で非公開 |
| 1010music blackbox(初代) | Blackbox Mod。SP-1200のモードなど |
| Akai MPC500 | Open500。新しいシーケンサーとエフェクト |
| Akai MPC(第1世代)・Force | VSTを読み込む非公式の方法。先週の記事 → Akai MPCでVSTが単体で動く。ただし非公式 |
10月15日追記: その後1週間で、Arturia MicroFreak向けのSuperFreaker(純正5.0.0.2084にエフェクトやMIDI機能を足す無料のパッチ、公開ベータ)、M-VAVE SMK-37向けのBaud Girl SMK-37+VA、そしてFeluccaの音源9種をKORG microKORG2とdrumlogue向けに移植したFluyt logue(rgrvmusic・無料)が出ました。波は続いています。なお、teenage engineering OP-XYに「ドラムシンセと複数チャンネルのUSBオーディオを足す更新が10月15日に来る」という流通筋の投稿が報じられましたが、同日時点で公式のダウンロードページの最新は1.1.33(9月2日)のままで、未確認の情報として扱います。
メーカーが自分で出した更新もありました。OXI Coral 3.0は音源を足したうえで「自分でファームを組める」仕組みを公式に開放し、Native Instruments Maschine+ 2.3.0はソフト版3.7の機能を単体機に持ってきました。こちらは普通の更新で、この記事の対象ではありません。
なぜ今、まとめて出たのか
Gearnewsは10月6日の記事で、理由を一言で「AIとvibe coding」と書いています。純正ファームウェアを解析して書き換える作業は、これまで数週間かけてバイナリを読む仕事でした。それをAIの支援でやれるようになった、という見立てです。
当サイトが確かめられた範囲でも、符合する点があります。FM-1の有志ファームの大半は神戸のHügelton Instruments(黒下レオ氏)のFeluccaから派生していて、同社は別の製品のページで「コードの支援にClaudeとCodexを使った」と明記しています。先週のMPCの件も、開発者がAIを使ったと報じられました。
もう1つは、ブラウザで完結する書き換えです。DOOM OSもFeluccaも、PCにソフトを入れずにブラウザで純正ファイルを読み込んで書き換えます。専用の道具が要らなくなったぶん、試す人が増えました。
Elektronが禁じたのは何か
Elektronは2026年9月16日、自社フォーラムElektronautsに声明を出しました。海外では「禁止」の見出しが並びましたが、中身は限定的です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 禁じたこと | フォーラムと公式チャンネルで、改造ファームのファイル・道具・リポジトリ・手順、およびそれらへの誘導を共有すること |
| 禁じていないこと | 改造ファームについて議論すること。持ち主が自分の機材を改造する行為そのもの |
| 理由 | 検証の足りないソフトが本体を壊す/知的財産/Elektronが公認していると誤解される |
| 例外 | 長く続いているMachinedrum XとMCLは従来どおり。ほかは個別に判断 |
つまり「Elektronの機材を改造すると規約違反」ではありません。公式の場で配らないでくれ、という声明です。一方で保証とサポートの対象外になることは、声明の理由からも読み取れます。Roland・Akai・1010music・M-VAVEの公式な見解は、この記事の時点では報じられていません。
入れる前に確かめる6点
どのプロジェクトも「自己責任で」と書いています。それを具体的にすると次の6点です。
- 保証期間。期間内の機材には入れない。期間外でも有償修理を受けられるかを先に調べる
- フルバックアップ。SDカードの中身、プロジェクト、サンプル、設定を全部別の場所に写す
- 純正ファイルの保管。いま入っている版のファイルと入手先を控える。戻すときに要る
- 戻し方を先に読む。FeluccaはインストーラーにM-VAVE純正へ戻す項目があり、Model-TGは文書に戻し方がある。DOOM OSは純正への戻し方がプロジェクトのページに書かれておらず、紹介記事では公式ファームの入れ直しとされている。ここが読み取れないプロジェクトは待つ
- 別のSDカード・空のプロジェクトで試す。本番のデータが入った状態で最初の起動をしない
- 止める基準を決めておく。起動の異常や保存の失敗が1回でも出たら、その場で純正に戻す
もう1つ、著作権の話があります。純正ファームウェアはメーカーのものです。どのプロジェクトも「配布しない・自分のファイルを使う」形にしているのはそのためで、書き換え済みのファイルを人に渡す行為は、プロジェクトの作法からも外れます。
当サイトの立場
運営者はSP-404MKIIを持っています。DOOM OSは入れていません。理由は、0.6.2 alphaという段階で、純正への戻し方がページに明記されていないことと、日々使っている機材を止めるわけにいかないことです。入れるとしたら、上の6点を満たして別のSDで行い、結果は失敗も含めて書きます。
記事の線引きは先週のMPCの件と同じにしています。
- 書く: 対象機種、必要な純正の版、増える機能、無料か有料か、ライセンス、戻せる仕組みがあるか、メーカーの見解
- 書かない: 導入の手順、配布物や書き換えサイトへの直リンク、第2世代機などでの抜け道の推測、「安全」「おすすめ」という評価
興味がある人は、各プロジェクトの公開ページを直接読んでください。説明はいずれも英語で、GitHubのページには星の数(Felucca 324・Model-TG 109・DOOM OS 101、2026年10月8日時点)が出ているので、どれが注目されているかの目安になります。
DAWLESS卓から見ると
- SP-404MKII: TR-REC方式の打ち込みが弱点だった機種に、グリッドのシーケンサーが付く。純正の機能は残る設計なので、使い勝手が変わる更新ではある。SP-404MKIIレビュー
- Model:Cycles: 「FM音源だけ」だった入門機がサンプラーになる。中古で4万円台の機種に起きた変化としては大きい。Model:SamplesとModel:Cyclesとは/中古の実売はDAWLESS機材の中古相場と探し方
- Digitakt初代・Octatrack: 生産が終わった機種に新しい音源が足される。初代を中古で狙う理由が1つ増える。Digitakt(初代)とは/Octatrack MKIIレビュー
- M-VAVE FM-1: 約1万円の小箱が6種類の別の楽器になる。ただし国内はAmazonに出品が無く、個人輸入か個人出品になる。Bluetoothを積んでいるので日本で電波を出すには技適が要り、当サイトは表示を確認できていない。改造前提で買う価値があるかは、来週に別の記事で扱う
海外から買うときの確認事項は日本で機材を買う前に。技適・PSE・保証・並行輸入にまとめています。
この記事は各プロジェクトの公開ページ、メーカーの声明、海外メディアの報道に基づく解説です。当サイトはここに出てくる有志ファームウェアをどれも導入しておらず、動作の確認はしていません。導入の手順と配布物へのリンクは載せていません。
画像について: アイキャッチはメーカーの製品写真を参考に、形状・配色・つまみやボタンの配置をなぞって描いたAIイラストです(ロゴや文字は省略。写真ではありません)。実機の姿は本文の公式動画でご覧ください。
次に読む
- この小箱の根の機種 → M-VAVE FM-1とは|1万円のDX7系シンセが有志ファームで6種類の別の楽器になる
- 先週のMPCの件 → Akai MPCでVSTが単体で動く。ただし非公式
- 所有機のレビュー → SP-404MKIIレビュー
- Elektron入門機の紹介 → Model:SamplesとModel:Cyclesとは
- 初代を中古で狙う → Digitakt(初代)とは
- 中古の実売 → DAWLESS機材の中古相場と探し方
出典
- Gearnews: Custom Firmware: Elektron Pushes Back, Modders Keep Flashing(2026-10-06)
- Synthtopia: Elektronの声明の報道(2026-09-23・声明は9月16日)
- CDM: Elektron is halting sharing of mods and hacks on its forums; official comments
- GitHub: klangfeld-labs/doom-os(版・土台・機能・免責)
- GitHub: TinyGregAudio/Model-TG(配布方針・ライセンス・機能)
- Synth Anatomy: 18nelli18 Modded Cycles(2026-10-02)
- Synth Anatomy: Soejrd Digisophie(2026-10-02)
- GitHub: octabam(Octatrack・ファーム非配布の方針)
- GitHub: hugelton/Felucca(音源・ライセンス・純正へ戻す項目)
- Hügelton Instruments: About(神戸・2020年設立)
- GitHub: charlesvestal/fm1-x0x(Feluccaの派生・ライセンス)
- Synth Anatomy: Groove OS(2026-10-04・29ドル・非公開)
- Synth Anatomy: M-VAVE FM-1 review(2026-07・仕様)
- いずれも2026年10月8日確認
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この記事はメーカー公式資料・公開情報に基づいています。個別機材の操作結果は、実機検証を行った時点で「検証済み」へ昇格させます。未検証の内容を「使ってみた」かのように書くことはしません(検証ポリシー)。
