この記事でわかること
- Claveが何をする箱か。8つの音と、8枚のタッチパッド
- ユークリッドシーケンサーとは何か。なぜ手で打つのと違う形が出るのか
- 仕様で分かっていること、まだ分かっていないこと
- 所有機のT-1やOXI ONEで代わりになるか
- 価格は未発表。Kickstarterは2026年9月17日開始(2026年9月11日時点)
何をする箱か
ClaveはメキシコシティのOficina de Sonidoが作る、手のひらに乗るドラムマシンです。筐体がなく、濃紺のプリント基板がそのまま楽器になっていて、表面には金色の細い線で幾何学模様が引かれています。左側に8枚の四角いタッチパッド、中央に小さなタッチ点とつまみ、右側に大きなつまみと、それを取り囲む16個のLEDが並びます。このLEDの輪が、いま何ステップ目かを示します。
音は8つ。それぞれにアクセント・音程・音量の3つを設定できます。全体にローパスフィルターとエフェクトがかかりますが、エフェクトの中身は発表されていません。内蔵のキットに加えて、自分で作った設定を本体に保存できます。
Oficina de Sonidoはユーロラックのモジュールやダブサイレンを作ってきた工房で、公式ストアの現行6製品は150〜280ドルの範囲です(2026年9月11日確認)。なお海外メディアは「同社初のドラムマシン」と書いていますが、同社にはクンビア向けのリズム機Hanan Cumbiaが既にあります。Claveはその系譜の新型と見るのが正確です。
ユークリッドシーケンサーとは
この機種の芯はユークリッドシーケンサーです。日本語の解説が少ない言葉なので、先にここを説明します。
普通のステップ入力は、16個のマスを1つずつ埋めていきます。ユークリッドは違って、「16マスに5回打つ」と数だけ決めると、その5回をできるだけ等間隔に散らしてくれます。16を5で割ると3余り1。割り切れないので、3マス空きと4マス空きが混ざった配置になる。この「割り切れない数をどう均すか」の計算が、2000年以上前のユークリッドの互除法と同じ手順なので、この名前が付いています。
面白いのは、こうして機械が散らした形が、世界中の伝統的なリズムと一致することです。情報科学者のGodfried Toussaintが2005年の論文で示しました。8マスに3回だとキューバのトレシージョ、8マスに5回だとシンキージョになります。
手で打つと、人はどうしても4分音符や8分音符の格子に寄ります。ユークリッドはつまみを回すだけで格子から外れた形が出てくるので、自分の手癖の外にあるリズムに、偶然たどり着くための道具として使われます。メキシコの工房がこの方式を選び、ラテンのリズム機を作ってきた会社であることを考えると、この組み合わせは理屈が通っています。
仕様のポイント
| 項目 | Clave(発表されている内容) |
|---|---|
| 音の数 | 8音。それぞれにアクセント・音程・音量 |
| 音源 | 未発表。サンプル再生か合成かは明かされていない |
| シーケンサー | ステップ入力と、ユークリッドの2方式。パラメータの自動変化にも対応 |
| 操作子 | タッチパッド8枚、小さなつまみ3個、タッチ点6個、大きなつまみ1個 |
| 表示 | 大きなつまみを囲む16個のLED。ステップと状態を示す |
| 音作り | ローパスフィルターとエフェクト。エフェクトの内容は未発表 |
| 保存 | 内蔵キットに加え、ユーザー設定を本体に保存 |
| 端子 | USB-C(給電)、音声出力、同期。同期の端子形式とMIDIの有無は未発表 |
| 電源 | USB-Cから。内蔵電池の有無は未発表 |
| 大きさ | 「超小型」とのみ。寸法は未発表 |
| 価格 | 未発表。Kickstarterで早割枠を用意するとの告知のみ |
| 時期 | Kickstarter開始 2026年9月17日。出荷時期は未発表 |
表のうち未発表が6項目あります。特にMIDI端子の有無は、他の機材と並べて使えるかどうかを決めるので、Kickstarterのページが開いたら最初に確認する項目です。
所有機で代わりになるか
正直に書くと、ユークリッドは目新しい機能ではありません。当サイトの所有機にも入っています。
- Torso T-1は、そもそも設計の土台がユークリッドです。打つ数とステップ数をつまみで決める操作が中心にあり、そのうえで個別のステップを手で直せます
- OXI ONE MKIIにもユークリッドのモードがあります
- どちらもMIDIシーケンサーなので、音は外の機材が出します。Claveは音源を内蔵した1台完結型です
つまりClaveを足す理由は「ユークリッドが使える」ことではなく、「ユークリッドで鳴る音源が、手のひらの1枚に収まっている」ことになります。机の上のシーケンサーから配線するのではなく、これ1枚を鞄に入れて持ち出す使い方です。逆に言えば、T-1やOXI ONEを持っていて、鳴らす音源にも困っていない人には、優先度は高くありません。
買い方と、いま決めなくていいこと
Kickstarterの開始は9月17日です。価格が出ていないので、いま決められることはありません。日本から支援する手順そのものはKickstarterに日本から参加する準備と同じで、開始日にページが開いてから判断すれば間に合います。
海外の個人工房から直接買うときの注意は日本で機材を買う前に。技適・PSE・保証・並行輸入にまとめています。クラウドファンディングは製品の予約ではなく開発の支援なので、遅延や仕様変更が起こり得る点も同じです。当サイトは価格と端子の詳細が出た時点で、この記事に追記します。
この記事は発表時点の公開情報に基づく新製品紹介です。実機・実物で確認した内容は含みません。価格や仕様は発表後に変わることがあります。
画像について: アイキャッチはメーカーの製品写真を参考に、形状・配色・つまみやボタンの配置をなぞって描いたAIイラストです(ロゴや文字は省略。写真ではありません)。実機の姿は本文の公式動画でご覧ください。
次に読む
- 同じ週に発表された画面なしのドラムマシン → oZoe Drum Box
- ユークリッドが土台の所有機 → Torso T-1レビュー(所有機)
- 電池で動く現行ドラムマシンの一覧 → 電池で動くドラムマシン比較
- クラウドファンディングの参加手順 → Kickstarterに日本から参加する準備
出典
- Synth Anatomy: Oficina de Sonido Clave(2026-09-10・仕様とKickstarter開始日)
- Oficina de Sonido 公式ストア(既存製品と価格帯)
- Godfried Toussaint, The Euclidean Algorithm Generates Traditional Musical Rhythms (BRIDGES 2005)(ユークリッドのリズムと伝統リズムの一致)
- いずれも2026年9月11日確認
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この記事はメーカー公式資料・公開情報に基づいています。個別機材の操作結果は、実機検証を行った時点で「検証済み」へ昇格させます。未検証の内容を「使ってみた」かのように書くことはしません(検証ポリシー)。
